西国三十三所の五番札所・葛井寺から南へ行くと、住宅地が広がる閑静な中に、巨大な構造体が突如現れます。
船のような形にも見えるこの建物は、藤井寺市立生涯学習センター。「アイセルシュラホール」という愛称があります。
モチーフは「修羅」と「船」
アイセルシュラホールの巨大建築。正式名称の「生涯学習センター」という名前からはなかなか想像できない、雄大な構造物です。
そのモチーフとなっているのは、藤井寺で出土した「修羅(シュラ)」と「船」です。

「修羅」とは、古墳に使われるような大きな石材を運ぶための、古代の木製のそりのこと。
1978年、藤井寺の三ツ塚古墳にて、歴史的評価の高い大小二つの修羅が出土しました。
修羅(大)は大阪府立近つ飛鳥博物館(河南町)で、修羅(小)は藤井寺市立図書館で、それぞれ展示されています。
一方の「船」は、仲哀天皇陵近くの岡古墳から出土した船形埴輪。こちらは、アイセルシュラホール内で展示されています。

館内の歴史展示ゾーン
藤井寺市民向けの施設であるアイセルシュラホールですが、館内二階の歴史展示ゾーンは、一般の方にもおすすめ。入場無料です。
藤井寺市内の古墳出土品など、藤井寺の歴史に関する貴重な資料が多数展示されています。
その中でも注目は、古墳出土品である、水鳥形埴輪と船形埴輪です。

水鳥形埴輪
水鳥形埴輪は全部で3体、藤井寺市内の津堂城山古墳から出土しました。
くちばしや水かきなど、古墳時代に作られたとは思えない見事な出来栄え。誰が見ても水鳥に見える、古代の逸品です。
日本最古とされるこれらの水鳥形埴輪、国重要文化財の指定も受けています。

船形埴輪
アイセルシュラホールのすぐ西に、仲哀天皇陵という大きな古墳があります。その近くにあった小さな陪塚(岡古墳)から出土したのが、この船形埴輪です。
長さ150cm、幅30cmにも、高さ45cmという大きな埴輪。船形埴輪としては、日本最大級の大きさを誇ります。

こちらもチェック!藤井寺の古墳
藤井寺から羽曳野にまたがる地域には、古市古墳群と呼ばれる大小多くの古墳が残ります。
古市古墳群の中でも、アイセルシュラホールと合わせて訪れたい、藤井寺の古墳を2つご紹介しましょう。
岡ミサンザイ古墳(仲哀天皇陵)
古市古墳群の中で最も西に位置する古墳。アイセルシュラホールのすぐ西にあります。
巨大な前方後円墳で、墳丘長は245m。全国で16番目の大きさです。宮内庁により、第14代仲哀天皇の陵に治定されています。
なお、仲哀天皇は、神功皇后の夫で、第15代応神天皇の父、また、第16代仁徳天皇の祖父に当たる天皇です。

津堂城山古墳
藤井寺北部にある古墳で、古市古墳群の中では最も北にあります。
宮内庁により陵墓参考地とされていますが、一部を除いて墳丘に登ることもできます。
1980年に発掘調査が行われ、先にご紹介した水鳥形埴輪など多数の埴輪が出土しました。
また、古墳の近くには、古墳からの出土品などを紹介するガイダンス施設「まほらしろやま」があります(入館無料)。


アイセルシュラホールの基本情報
住所:大阪府藤井寺市藤井寺3丁目1-20
開館時間:9:30~17:15
休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日休館)、年末年始(12/29~1/5)
アクセス:(近鉄南大阪線)藤井寺駅から徒歩8分
駐車場:有
ホームページ:アイセルシュラホール2階歴史展示ゾーン(藤井寺市ホームページ)