奈良県中部の橿原は、古くから知られる大和三山があり、また、藤原京も置かれた歴史あるまち。
今も市内各所に由緒ある神社やお寺が点在しています。
その1つが、今回ご紹介する久米寺(くめでら)です。
大和三山の一・畝傍山の南、また橿原神宮にもほど近いこのお寺。創建については不明ながらも、興味深い伝説も残る古刹です。
眼病治癒の薬師如来と久米仙人伝説
久米寺は、飛鳥時代、聖徳太子の弟、来目皇子(くめのみこ)による建立とも伝わります。
眼病を患った皇子が、医薬を司る仏さま・薬師如来に祈願したところ、その願力により、見事、病気が治ったとのこと。
眼病治癒の御利益に感謝して皇子が建てたとされるこの久米寺。
もちろん今も、お寺のご本尊は薬師如来です。

また、この久米寺は、久米仙人の伝説でも知られます。
久米仙人とは、神通力を駆使して自由に大空を飛び回ったとされる、伝説の人物。
聖武天皇による東大寺建立も助け、その功績もあって久米寺を創建したとか。
一方で、飛行中に美しい女性のふくらはぎに見とれて落下した、というユーモラスな逸話も伝わります。
俗っ気満載のおちゃめな仙人さんですね。

久米寺の境内見どころ
その後の久米寺は、弘法大師空海がこのお寺で大日経を感得したとも伝わるなど、真言密教のお寺として栄えました。
現在は、京都の仁和寺を総本山とする真言宗御室派の別格本山です。

本堂
境内の奥にどっしりと立つ、入母屋造の本堂。江戸時代前半、1663年の建立です。
久米寺のご本尊、病気平癒の仏さま・薬師如来像が祀られています。

多宝塔
多宝塔は、元は、京都の仁和寺にあったもので、江戸時代初期の1659年にここに移築されました。
均整のとれたこの美しい多宝塔は、国の重要文化財にも指定されています。

また、久米寺は、5月のツツジや6月のアジサイでも知られる、花のお寺です。
特にアジサイが有名で、6月~7月には境内全体がピンクや紫のアジサイの花で美しく彩られます。
6月第3日曜日には「あじさい祈願」が行われます。
久米寺の基本情報
住所:奈良県橿原市久米町502
備考:境内拝観自由(ただし、6月のあじさい園は有料)
アクセス:(近鉄)橿原神宮前から徒歩5分