京都・伏見桃山を東西に貫く大通り、大手筋。
伏見城の築城時に整備されたこの大通り沿いに、お城よりもはるかに古い歴史を誇る神社があります。
それが、今回ご紹介する御香宮神社(ごこうのみやじんじゃ)。
風情ある町の一角に鎮座する由緒ある社。伏見桃山の代表的な名所の1つです。
名水湧き出る伏見の古社
御香宮神社の創建は不明ですが、貞観四年(862年)の記録が残ります。平安の頃より知られる伏見の古社です。
境内から大変香りの良い水が湧き出したことから、時の天皇より「御香宮」の名を賜ったと伝わります。

社名の由来ともなったこの名水は、御香水(ごこうすい)。
現在も御香宮神社の境内から湧き出している御香水、伏見の名水の1つに数えられています。

御香宮神社の境内
長い歴史を誇る御香宮神社。
今も古い建築物や旧跡が残る、見どころの多い境内です。

表門
境内の南端、大手筋に面して立つ表門。
三間一戸のがっしりとした造りの門です。伏見城の大手門を移築したものと伝わります。
現存する数少ない伏見城の遺構の1つで、国重要文化財の指定を受けています。

注目は、門の上部に並ぶ蟇股(かえるまた)。
それぞれの蟇股には「中国二十四孝」の精巧な彫刻が施されています。
高い工芸技術が駆使されたこの表門、桃山時代を代表する建築物の1つです。

拝殿・本殿
参道の奥に立つ、拝殿と本殿。
手前の拝殿は、中央に通路がある、割拝殿形式の社殿。紀州徳川家初代藩主、徳川頼宣の寄進により、1625年に建てられました。
正面の唐破風や蟇股には、美しい彫刻が施されています。

拝殿の奥に鎮座する本殿。こちらは、1605年、徳川家康による造営。国重要文化財指定。
主祭神は神功皇后。神功皇后の夫・仲哀天皇や、神功皇后の息子・応神天皇も祀られています。

伏見城の遺構
御香宮神社には、先ほど説明した表門の他にも伏見城の遺構が残ります。
例えば、表門をくぐった先の参道横、たくさんの大きな石が山積みにされています。昔の伏見城にあった残石とされています。
また、社務所の一画には、伏見城跡出土遺物展示室があります(入場無料)。こちらでは、大名家紋入りの瓦など、発掘調査の出土品が展示されています。

枯山水庭園(石庭)
社務所の裏には庭園があります(拝観有料)。
この庭園は、伏見奉行を務めた、江戸時代の高名な作庭家、小堀遠州の庭園を移設・復元したもの。
白砂の上に大小さまざまな石と木がバランスよく配された、美しい枯山水庭園。「石庭」とも呼ばれています。

伏見の戦跡
明治初期、戊辰戦争の緒戦「鳥羽伏見の戦」において、御香宮神社はその戦いの舞台の1つとなりました。
当時、神社のすぐ南には、旧幕府軍が籠もる伏見奉行所がありました。
これに対して、新政府軍の主力である薩摩藩は御香宮神社に本営を置きます。
薩摩藩はここに大砲を据え付け、伏見奉行所を間断なく砲撃。これにより伏見奉行所は炎上、旧幕府軍は敗退を余儀なくされました。
御香宮神社の境内には、伏見の戦跡を示す石碑が残ります。

御香宮神社の基本情報
住所:京都市伏見区御香宮門前町174
石庭拝観:(拝観時間)9:00~15:30 (拝観料)200円
備考:石庭以外は境内自由
ホームページ:御香宮神社