日本のお寺の仏像について、「寺院について(仏像編その1)」では、悟りを開いた仏・如来についてご紹介しました。
今回は、如来以外の仏さま、菩薩(ぼさつ)、明王(みょうおう)、そして、天部(てんぶ)についてお話しします。
穏やかな菩薩
菩薩とは、悟りを開くために日々修行中の者。
仏教では、菩薩は、如来に次ぐ高位の者とされています。人々に慈しみを与える穏やかなお顔が特徴です。
如来像との違いの1つは、その身なり。法衣1枚しか着ていない質素な服装の如来に対して、菩薩は華やかな衣装・装飾具を身につけています。
如来については、こちらのページもご覧ください。
また、菩薩にもいろいろな種類があります。
その中でも、特に日本のお寺に多いのは観音菩薩と地蔵菩薩。その他、弥勒菩薩、文殊菩薩、普賢菩薩の像も、比較的よく見かけます。

観音菩薩
優しげなお顔の観音菩薩。
日本では最も人気の高い菩薩さまで、どのお寺にもたいてい観音菩薩像があります。
また、古来より、各地にある観音霊場(札所)をめぐる巡礼も盛んに行われてきました。
今でも、近畿一円の西国三十三所、関東一円の坂東三十三箇所、埼玉・秩父周辺の秩父三十四箇所などが知られています。

なお、一口に観音菩薩といっても、いろんな姿の像が存在します。
その理由の1つは「六観音」。
六観音とは、六道(地獄道、餓鬼道、畜生道、修羅道、人間道、天道)のそれぞれで衆生を救うとされる、六種類の観音菩薩です。
六観音は、六道それぞれで姿形を変えて現れます。
例えば、無数の手を広げた姿の千手観音は、餓鬼道の観音さま。
また、頭の上に10個(場合によっては11個)の頭を備えた十一面観音は、 修羅道を迷う衆生を救います。

地蔵菩薩
剃髪したツルツル頭が特徴の地蔵菩薩。親しみを込めて「お地蔵さん」と呼ばれます。
釈迦入滅後、次に説明する弥勒菩薩が悟りを開いて仏として出現するまでの間、この世を救う存在とされています。
地蔵菩薩にも、観音菩薩の六観音と同様、六道それぞれに登場する「六地蔵」があります。
ただ、観音菩薩のように顔や手が増えるような大変化ではなく、持ち物が変わる程度。
遊行する僧が持っているような錫杖(しゃくじょう)を手にしている姿が一般的ですが、数珠や玉を持っている像も時折見かけます。

弥勒菩薩
弥勒菩薩(みろくぼさつ)は、将来、如来(仏)になることを約束された菩薩さま。
お釈迦さま入滅後の遠い未来、56億7千万年後(!)に悟りを開くとされています。未来仏とも呼ばれます。
日本にある弥勒像は、菩薩姿の像が多いのですが、一部、仏になった後の像もあります。
その場合は弥勒菩薩ではなく、弥勒如来、あるいは、弥勒仏と呼ばれます。
文殊菩薩・普賢菩薩
釈迦如来の脇侍として登場することの多い、文殊菩薩(もんじゅぼさつ)と普賢菩薩(ふげんぼさつ)。
中央の釈迦如来と左右に控える文殊菩薩・普賢菩薩の三体のセットは、釈迦三尊像と呼ばれ、多くの寺院で見られます。
三尊形式ではなく単独で祀られる場合もあります。
その場合の文殊菩薩は、獅子の上に座っている場合が多いですね。一方、普賢菩薩の単独像は、白象に乗った姿が一般的です。

忿怒の明王
真言宗などの密教で登場する、忿怒(ふんぬ)の表情をした明王。密教における最高仏、大日如来の別の姿であるともいわれます。
明王には、人々を仏さま(如来)の教えに導く役割があります。
その怒りの表情は、人の内面にある悪や不正、誘惑、やましい心などを断ち切るため。
か弱い人々を脅しつけるための「強面」では決してありません。
明王にもいろいろな種類がありますが、有名なのは、不動明王と愛染明王です。
不動明王
不動明王(ふどうみょうおう)は、日本のお寺でよく見かける代表的な明王。
不動明王の像形は、一面二臂、つまり、顔が1つで腕が2本。この点は人間と同じです。
ただし、口から牙をむき、怒りの表情で前をにらむ、恐ろしい顔つき。
顔や肌は青黒く、一見、青鬼のようにも見えますが、あくまでも仏の化身であり、鬼ではありません。
手には悪を断ち切るための剣を持ち、背には人間の煩悩を焼き尽くす聖なる炎が真っ赤に燃えさかります。

愛染明王
不動明王と並ぶ人気の、愛染明王(あいぜんみょうおう)。
こちらは一面六臂のお姿、六本の手には弓や五鈷杵などが握られています。
不動明王と同じくこちらも怒りの形相。人々の愛欲や執着を焼き尽くし、悟りの境地へ導きます。

仏法の守護神、天部
天部は、仏法を守護する神々のグループです。如来のいる世界・須弥山(しゅみせん)の下に住み、如来をサポートします。
天部の種類は非常に多く、インド神話から取り込まれたものなど、その出自はざまざま。
その中でも、日本のお寺でよく見かけるのは、金剛力士と四天王です。
その他、有名な興福寺の阿修羅や、薬師如来の眷属・十二神将なども天部に含まれます。
金剛力士
お寺の正門(山門)の左右に立つ金剛力士(通称・仁王)。
なお、金剛力士(仁王)が置かれている門は、一般に仁王門と呼ばれます。
口を開けた阿形(あぎょう)と口を閉じた吽形(うんぎょう)の二体でペアを組みます。
門の入口を左右から固め、怒りの表情で仏敵を退散させます。
奈良仏師・運慶一派により作られた、東大寺南大門の巨大な金剛力士像が特に有名です。

四天王
四天王は、須弥山の周囲四方を守護する神々。
東の持国天、南の増長天、西の廣目天、北の多聞天の四柱です。
鎧を着込み、武具を手にした四天王。いかめしい顔をして立ち、如来を仏敵から守ります。

まとめ
・穏やかな顔の菩薩、六道で観音菩薩は姿を変え(六観音)、地蔵菩薩は持ち物を変える(六地蔵)
・明王の忿怒の表情は、人々の悪や煩悩を断ちきるため
・天部は仏法の守護神、金剛力士や四天王などがここに含まれる
次回「寺院について(伽藍)」では、仏堂や仏塔など寺院の境内に立つ建物についてお話しします。

