興福寺|塀のない開放的な境内に、古都のシンボル五重塔(奈良名所巡り)

今回ご紹介するのは、奈良の興福寺(こうふくじ)。
近隣の東大寺などとともに、奈良を代表するお寺の1つです。

名族・藤原氏ゆかりのお寺で、南都七大寺の1つ。

緑豊かな奈良公園に囲まれた、塀や門のない開放的な境内。

そこには、古都奈良のシンボル・五重塔をはじめ、古建築や仏像など、貴重な文化財が数多く残ります。
平成30年には、新・中金堂の落慶でも話題になりました。

興福寺は、世界遺産「古都奈良の文化財」にも登録されています。

興福寺

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藤原氏ゆかりのお寺

興福寺の前身は、天智天皇の時代に、現在の京都山科の地に建てられた山階寺(やましなでら)。
藤原(中臣)鎌足夫人が、夫の病気平癒を祈って建立したお寺です。

その後、お寺は藤原京へ移り、さらに、710年の平城京遷都に従って現在地に移転。

鎌足の息子・藤原不比等により興福寺と名付けられました。

奈良時代~中世にかけて、朝廷で絶大な権勢を誇った藤原氏。

その藤原氏の氏寺とされた興福寺、同じく藤原氏とのゆかりの深い春日大社とともに、手厚く保護され栄えました。

興福寺・東金堂と五重塔

門も塀もなし!開放的な境内

緑あふれる奈良公園に接する、現在の興福寺。

また、これほどの大きなお寺には珍しく、境内の周りには門や土塀などがほとんどありません。
開放感あふれる空間です。

周辺の鹿たちも気軽にやってきて、観光客と戯れる姿もよく目にします。

開放的な興福寺境内

現在の興福寺境内に塀がない理由の1つは、今の奈良公園の大部分が、興福寺の旧境内であったため。

繁栄を極めた当時の興福寺は、今とは比べものにならないほど広い寺領を保有していました。

なので、現在の境内地だけを塀で取り囲む必要性もありませんでした。

しかし、明治の神仏分離令を発端に、日本全国で、廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)の嵐が吹き荒れると、興福寺も大打撃を受けました。

寺領は没収、建物は壊され、古くから伝わる仏像も売りに出される始末。

そのときに失った境内地の一部が、今の奈良公園です。

現在も奈良公園内には、旧興福寺境内時代の土塀が、半ば崩れながらも残されています。

興福寺旧境内(現・奈良公園)の土塀

興福寺の境内見どころ

昔と比べれば規模はかなり縮小したものの、それでも、興福寺には、古い建物や仏像がまだかなり残されています。

国宝や国の重要文化財に指定されている文化財も数多く。

見どころの多い興福寺境内、その中でも特に押さえておきたいスポットをご紹介します。

なお、興福寺の境内は拝観自由(入場無料)。

また、境内の中金堂・東金堂・国宝館は、常時、一般公開されています(拝観は有料)。

中金堂

古代の興福寺には、中金堂・東金堂・西金堂の3つの金堂がありました。

中心となるのは中金堂ですが、江戸時代中期に失われてから300年近くも、中金堂のない状態が続いていました。

しかし、2018年(平成30年)、ついに中金堂が再建。

新しい中金堂には、他のお堂から移されたさまざまな仏像が安置されています。

堂内中央には、興福寺本尊の釈迦如来座像。

その左右には、薬王菩薩と薬上菩薩の立像。ともに3.5mを超える大きな像です。

また、元は南円堂に置かれていた四天王像(国宝指定)も中金堂に移されました。

興福寺中金堂

東金堂

三金堂のうち、唯一、古建築として残るのがこの東金堂。

室町時代中期の1415年の再建で、国宝に指定されています。

東金堂では、薬師三尊像や四天王像など、堂内に並ぶ仏像群も見どころ。

すべて国宝あるいは国重要文化財に指定されています。

興福寺東金堂

五重塔

東金堂の隣には、五重塔が立っています。

奈良公園内はもちろん、若草山など周辺各地からも見えるこの塔は、東大寺大仏殿と並ぶ、古都奈良のシンボル。

現在の五重塔は、室町時代中期、1426年の再建、国宝に指定されています。

また、その高さは約50m。
木造の古塔としては、京都・東寺の五重塔に次いで二番目に高い塔です。

興福寺五重塔

北円堂

境内の北西に立つ北円堂。

「円」とは言うものの、実際には八角形の形をした「八角円堂」です。

元は藤原不比等の一周忌に建てられたお堂。
ただし、現在のものは鎌倉時代初期の再建です。

この北円堂は、国宝に指定されています。

興福寺北円堂

三重塔

興福寺には、五重塔の他に三重塔も残ります。

五重塔よりも古く、鎌倉時代前期の建築物。
上の北円堂とともに、現在、興福寺に残る建物の中で最古の部類に入ります。

この三重塔も国宝に指定されています。

五重塔よりも小ぶりではありますが、塔の高さと屋根の大きさとがうまく調和した、美しい塔です。

興福寺三重塔

南円堂

境内の南西にある南円堂は、北円堂と同じく八角円堂。

ただし、現在の南円堂は、北円堂よりは年代は新しく、江戸時代中期、1741年の再建。
国重要文化財の指定を受けています。

西国三十三所の第九番札所としても知られる南円堂。
巡礼で訪れる人が絶えません。

また、お堂の周囲の藤は、藤原氏を象徴する花。
ここの藤は、南都八景の1つにも選ばれています。

興福寺南円堂

国宝館

国宝館は、興福寺の寺宝を展示する宝物館です。

その名に恥じず、仏像を中心に、国宝・国重要文化財に指定されている貴重な文化財を多数展示。

3つのお顔に6本の腕(三面六臂)、しかし、少年のような優しい顔立ちが人気の「阿修羅像」も、ここで拝むことができます。

興福寺国宝館

興福寺のおすすめビュースポット

五重塔や三重塔をはじめ、古建築が残る興福寺。

境内を巡るのもよいのですが、少し離れた位置から眺めるのもなかなかよいものです。

一番のビュースポットは、興福寺境内の南側に広がる猿沢池(さるさわいけ)。

南側から池越しに眺める五重塔は、奈良を象徴する風景の1つです。

天気のよい日には、池の中島で多くの亀がのんびりと甲羅干し。

興福寺や奈良公園の散策で疲れたときの休憩にも、ちょうどよい場所です。

猿沢池から興福寺を望む

興福寺の基本情報

住所:奈良県奈良市登大路町48番地

電話番号:0742-22-7755(本坊寺務所)

拝観時間:午前9時~午後5時(年中無休)

拝観料:中金堂・東金堂・国宝館は常時公開
(中金堂)大人・大学生500円 中高生300円 小学生100円
(東金堂)大人・大学生300円 中高生200円 小学生100円
(国宝館)大人・大学生700円 中高生600円 小学生300円

東金堂と国宝館は共通券あり(大人900円)

アクセス:近鉄奈良駅より徒歩5分

駐車場:有(普通車46台・駐車料金1000円)

ホームページ:法相宗大本山 興福寺

興福寺地図

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