兵庫津(ひょうごのつ)は、現在の神戸市兵庫区にあった昔の港。
平安時代末期から幕末の神戸開港まで、ここは、日本を代表する港として栄えました。
昔の港周辺には、今も、古寺・古社・史跡など、さまざまな名所旧跡が残ります。
それらの名所を巡る道、それが、今回ご紹介する「兵庫津の道」です。
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発展のきっかけは平清盛
古代の兵庫には、奈良時代の行基(ぎょうき)が築いた大輪田泊(おおわだのとまり)がありました。
天然の良港として知られた大輪田泊、そこに目をつけたのが、平安時代末期の平清盛です。
清盛は、大輪田泊に大規模な改修を実施。
その結果、中国・宋から大型の貿易船も来航する、当時の国際貿易港に変貌を遂げました。
鎌倉時代以降は兵庫津と呼ばれるようになり、室町時代には日明貿易の拠点、鎖国下の江戸時代でも国内航路の要所として栄えました。
ただ、幕末~明治の神戸開港後は、港としての機能は衰退。
しかし、その長い歴史を感じさせる名所旧跡が、今もこの地の各所に残ります。
「兵庫津の道」主要スポット
北の兵庫駅から南の和田岬駅までのエリアに、お寺や神社、史跡などさまざまなスポットが点在しています。
特に、福海寺・柳原蛭子神社・柳原天神社・能福寺・真光寺・薬仙寺・和田神社の7つの社寺は、「兵庫七福神」として親しまれています。
なお、兵庫津の道といっても、定まった道筋があるわけではありません。
名所旧跡を気ままに巡りながら、歴史ある兵庫の街を歩いてみましょう。
主な道には歩道が整備され、要所には案内板や道標が設置されていますので、迷うこともありません。
では、北から順に、「兵庫津の道」主要スポットをご紹介していきます。
福海寺
JR兵庫駅の東にある福海寺(ふくかいじ)。
兵庫駅から歩き出すなら、ここが兵庫津の道めぐりのスタート地点となります。
室町時代初期(南北朝時代)、室町幕府初代将軍・足利尊氏により創建された禅寺。
現在は、臨済宗南禅寺派のお寺です。
兵庫七福神では大黒天を祀ります。
柳原蛭子神社
福海寺のすぐ南には、柳原蛭子神社(やなぎはらひるこじんじゃ)があります。
西宮神社と同じく蛭子大神(えびす)を祀る神社で、「柳原えびす」とも呼ばれます。
兵庫七福神の1つで、その神さまはもちろん、えべっさん(えびす)です。
なお、この辺りは、その昔、京から西国へ向かう昔の幹線道路、西国街道の要所でした。
柳原蛭子神社の横には、西国街道から兵庫の町に入る玄関口、柳原惣門跡を示す石碑があります。
柳原天神社
柳原蛭子神社の南にある柳原天神社(やなぎはらてんじんしゃ)。
学問の神さま、菅原道真を祀ります。
京から左遷先の太宰府へ向かう菅原道真が、途中、大輪田泊に上陸したという伝承が残ります。
兵庫七福神では、布袋(ほてい)を祀ります。
能福寺(兵庫大仏)
兵庫津の道における中心的なスポットが、この能福寺(のうふくじ)。
日本三大仏の1つとも言われる、「兵庫大仏」で有名なお寺です。
また、平清盛とのゆかりの深いお寺でもあり、境内には、清盛のお墓・平相国廟があります。
兵庫七福神では、毘沙門天を祀ります。
(詳細については、「能福寺」のページもご覧ください)
新川運河キャナルプロムナード
明治時代、海難事故の多い和田岬周辺の航行を避けるため、東の兵庫港と西の須磨を直結する運河が作られました。
能福寺の南には、そのうちの1つ、南北にのびる新川運河があります。
運河沿いには、「キャナルプロムナード」と名付けられた遊歩道が整備されています。
ベンチや休憩所もあり、ひと休みするのにちょうどよい場所です。
また、遊歩道の途中には、昔の兵庫城の跡があります。
兵庫城は、織田信長配下の池田恒興により築城されたお城で、明治の廃藩置県後には最初に兵庫県庁が置かれました。
大輪田橋
キャナルプロムナードの南の終点近くにある橋は、大輪田橋(おおわだばし)。
運河をまたぐ、コンクリートのアーチ橋。大正13年の竣工です。
神戸大空襲と阪神淡路大震災でそれぞれ大きな被害を受けながらも修復され、今も現役バリバリの橋です。
清盛塚・琵琶塚
大輪田橋の西には、清盛塚と呼ばれる十三重石塔があります。
鎌倉時代の弘安9年(1286年)に建立された、高さ8.5mの石塔です。
また、清盛塚の横には平ぺったい大きな巨石。こちらは、琵琶塚と呼ばれています。
(清盛塚・琵琶塚の詳細については、「清盛塚」のページもご覧ください)
真光寺
清盛塚のすぐ近くには、真光寺(しんこうじ)。
「大檀林」と刻まれた、入口の大きな石碑が目印です。
時宗のお寺で、境内には、時宗の開祖・一遍上人のお墓が残されています。
また、兵庫七福神では福禄寿(ふくろくじゅ)を祀ります。
(詳細については、「真光寺」のページもご覧ください)
薬仙寺
真光寺から南、運河をわたった先にあるのは、薬仙寺(やくせんじ)。
奈良時代、行基による創建とも伝わる古いお寺です。
境内には、平安時代末期、平清盛が後白河法皇を幽閉した萱の御所跡や、鎌倉時代末期の後醍醐天皇ゆかりの霊泉などがあります。
また、兵庫七福神では、寿老人(じゅろうじん)を祀ります。
和田神社
兵庫津の道にある名所旧跡の中で、最も南に位置するのがこの和田神社。
北から歩いてきた場合は、ここが終点になります。
昔は和田岬にあり、古くから海の神として崇敬を受けてきました。
また、ここも兵庫七福神の1つ、水を司る弁財天を祀ります。
兵庫津の道の基本情報
住所:神戸市兵庫区
最寄り駅:(JR神戸線)兵庫駅 (JR和田岬線)和田岬駅 (地下鉄海岸線)中央市場前駅・和田岬駅
備考:上で紹介したスポットは、すべて入場(参拝)自由