西大寺の少し北に、秋篠と呼ばれる閑静なエリアが広がります。
ここは、いにしえの頃より知られる歴史ある地、また、秋篠宮家の名前の由来となったことでも知られます。
今回は、この秋篠の地に古くから残る秋篠寺(あきしのでら)をご紹介します。
歴史ある秋篠に残る古刹
秋篠寺は、奈良時代、光仁天皇の発願で建立された勅願寺と伝わります。
落ち着いた雰囲気の秋篠に残るこのお寺、奈良ではよく知られた古刹の1つです。
木々に囲まれたひっそりとしたお寺の境内。入口の門は東と南にあります。

木々が茂り緑の苔が広がる境内
門をくぐった先、秋篠寺の境内は、雑木林がうっそうと茂る静寂な空間。
境内の奥には本堂があるのですが、周囲の木々に囲まれてほとんど見えません。

木々の根本には、深緑の苔が一面に広がります。美しい苔のじゅうたんです。
また、青々とした苔の中、ところどころに、白い石が顔を覗かせています。これは、昔の秋篠寺の伽藍跡です。
今でこそ、ひっそりとした古刹のイメージが強い秋篠寺ですが、その昔は、金堂・東塔・西塔など立派な伽藍を構えた大寺院。
静かな境内のあちこちに、金堂や東塔の礎石が残ります。

本堂と諸仏
苔に囲まれた参道を奥に進むと、急に開けた場所に出ます。
その真ん中に立つ大きなお堂。これが、秋篠寺の本堂です。
国宝本堂の中にずらりと並ぶ仏さま
本堂は鎌倉時代の建築物。創建当時(奈良時代)の講堂を改修したものとも言われています。国宝指定。
全体的には、鎌倉以前の伝統的な建築様式、和様の仏堂です。
ただし、床が張られず、堂内には土間が広がるなど、鎌倉以降の新しい様式もところどころに取り入れられています。

本堂の中には、このお寺に残る貴重な仏像が数多く安置されています。
堂内中央には、秋篠寺のご本尊・薬師如来。鎌倉時代の作で、国重要文化財指定。
その両脇に、脇侍の日光菩薩(にっこうぼさつ)と月光菩薩(がっこうぼさつ)が控えます。
一番人気は「技芸の女神」伎芸天
本堂内には、もう1つ有名な仏像があります。それは、伎芸天(ぎげいてん)。
伎芸天は、「伎芸(芸術)」の女神とも呼ばれます。日本では大変珍しい仏像で、この秋篠寺にしかないとも言われています。
やさしげな表情のお顔と、丸みのある女性的なお姿。秋篠寺の一番人気の仏さまです。
頭の部分は奈良時代の作、体は鎌倉時代の補作で、国重要文化財に指定されています。

秋篠寺の基本情報
住所:奈良市秋篠町757
境内について:本堂周辺は拝観有料、それ以外は境内散策自由
拝観時間:9:30~16:30
拝観料:大人・大学生・高校生500円 中学生200円 小学生100円
アクセス:
(近鉄)大和西大寺駅から徒歩20分
(バス利用)大和西大寺駅からバス乗車、「秋篠寺」バス停下車すぐ
駐車場:有
ホームページ:秋篠寺(奈良市観光協会サイト)