奈良の興福寺界隈の南にある、ならまち(奈良町)は、落ち着いた雰囲気の中に風情ある町並みが残る、奈良の名所の1つです。
このならまちの中に、1つの歴史あるお寺がたたずむように立っています。
それが、今回ご紹介する元興寺(がんごうじ)。現在は、西大寺を総本山とする、真言律宗の寺院です。
昔の元興寺境内=現在のならまち
元興寺の前身のお寺は、日本最初の本格的仏教寺院とも言われる飛鳥寺。平城京への遷都の際に、飛鳥から現在の地に移転しました。
奈良時代は、朝廷の庇護を受け、奈良を代表する寺院に成長。東大寺や興福寺などとともに、南都七大寺の1つにも数えられました。
大伽藍が並んだ昔の境内の広さは、現在の数倍。現在の元興寺の周囲に広がる、ならまちは、昔の元興寺境内とほぼ一致しています。

ならまちの中には、昔の元興寺の規模の大きさを感じさせる、いくつかの遺構が残ります。
その1つが、幕末の1859年に焼失した、元興寺大塔の跡。高さ70m超とも言われる、巨大な五重塔であったそう。

古い建築物・文化財が残る境内
最盛期と比べるとかなり規模が縮小した、現在の元興寺。
しかし、その境内には、国宝や国重要文化財に指定される古い建築物や文化財が数多く残されています。

東門
元興寺境内の東に立つ、立派な四脚門。
室町時代の応永年間に、東大寺からの移築されたものです。国重要文化財指定。
この東門は現在の元興寺の正門であり、拝観入口もここです。

本堂
東門をくぐった先の境内中央にどっしりと座る、寄棟造の大きなお堂です。こちらは国宝指定。
昔の僧坊(僧侶の生活の場)の一部を改造したもので、極楽坊本堂とも呼ばれます。
なお、本堂の改築は鎌倉時代ですが、奈良時代の建材や、さらに古い飛鳥時代の瓦も使われています。本堂内の拝観もできます。

禅室
本堂の背後(西側)に立つ、切妻造の大きな建物。本堂と同じく、鎌倉時代に僧坊を改築したものです。こちらも国宝指定。
なお、本堂とは違い、禅室には普段立ち入ることはできません。

法輪館(収蔵庫)
元興寺が保有する宝物の収蔵庫です。
法輪館での一番の注目は、館内1階中央に立つ五重小塔。細部まで精巧に作られた、高さ5.5mの「ミニチュア五重塔」です。
奈良時代の作で、国宝指定。ずっと屋内で保管されていたため、年代の古さの割には傷みが少なく、美しい姿を今も残しています。
なお、国宝の五重塔は日本全国にいくつもありますが、国宝の五重小塔となると、この元興寺と海龍王寺にしかありません。
その他、館内では、阿弥陀如来像や弘法大師像など、国重要文化財指定の貴重な仏像も公開されています。

元興寺の基本情報
住所:奈良市中院町11番地
拝観時間:9:00~17:00(入門は16:30まで)
拝観料:大人・大学生700円 高校生・中学生500円 小学生300円
アクセス:(近鉄)奈良駅から徒歩15分 (JR)奈良駅から徒歩20分
駐車場:有(東門駐車場・普通車10台)
ホームページ:元興寺