いにしえの奈良の都・平城宮跡の東、佐保路・佐紀路エリア。
ここは、その昔、都と東大寺(転害門)とをつなぐ通り沿い。
貴族の邸宅やお寺が建ち並んでおりました。
今も、この辺りには奈良時代からの古いお寺が残ります。
その1つが、今回ご紹介する海龍王寺(かいりゅうおうじ)。
小さいお寺ですが侮るなかれ。
奈良時代の貴重な文化財も残る、佐保・佐紀路の名所の1つです。
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光明皇后宮の「隅寺」
奈良時代の初期、平城宮のすぐ東に、当時第一等の人物、藤原不比等の邸宅がありました。
不比等の死後は、その娘である光明皇后(聖武天皇后)の住まいとなりました。
その光明皇后宮に現在残っているのが、光明皇后創建の法華寺と、この海龍王寺。
光明皇后宮の北東隅に立っていた海龍王寺、「隅寺」とも呼ばれていたそうです。
海龍王寺の創建は定かではありませんが、奈良時代前半にはすでに存在していたと考えられます。
都が京都に移った後には一度荒廃しました海龍王寺。
しかし、鎌倉時代に西大寺の叡尊により復興されました。
今も西大寺との関係は深く、現在は、西大寺を総本山とする真言律宗のお寺です。
海龍王寺の境内見どころ
隣接する法華寺と比べ、こぢんまりとした海龍王寺の境内。
しかし、その小さな中にも、奈良時代以降の貴重な文化財が今も残されています。
本堂
境内の北側に立つ海龍王寺の本堂。
江戸時代前半の寛文年間(1665年頃)の建立とされています。
昔の海龍王寺には、興福寺などと同じように、中金堂、東金堂、西金堂(現存)の3つの金堂がありました。
現在の本堂は、昔の三金堂のうちの中金堂があった場所に立っています。
ご本尊は十一面観音(国重要文化財)。
秘仏ですが、春と秋に特別公開されます。
西金堂
境内の西側に立つ西金堂は、昔の三金堂の中の唯一の現存。
正面三間、奥行二間。こぢんまりとした境内に合った、こぶりなお堂です。
西金堂は奈良時代の建立。ただし、鎌倉時代に大規模な修理がなされています。
国の重要文化財に指定されています。
五重小塔
海龍王寺一番の見どころが、西金堂の中に置かれている五重小塔。
奈良時代・天平年間につくられた逸品。国宝に指定されています。
国宝指定の五重小塔としては、他に、元興寺五重小塔(高さ5.5m)がありますが、海龍王寺の五重小塔はこれよりはやや低く、高さは4mです。
また、室内設置の“ミニチュア五重塔”ではありますが、国宝指定の文化財分類は「美術品」ではなく「建造物」です。
経蔵
境内南側には経蔵があります。
お経や仏典などを収めるためのお堂です。
この経蔵も昔の建物で、鎌倉時代、西大寺の叡尊による復興時に建てられました。
国の重要文化財に指定されています。
海龍王寺の基本情報
住所:奈良市法華寺町897
電話番号:0742-33-5765
開門時間:午前9時~午後4時半(特別公開時は午後5時閉門)
拝観料:大人500円 中高生200円 小学生100円
(特別公開時は大人600円 中高生300円 小学生100円)
備考:8/12~17、および、12/24~31は閉門
アクセス:
(近鉄)新大宮駅から徒歩15分
(バス利用)近鉄奈良駅・近鉄西大寺駅・JR奈良駅からバス乗車、「海龍王寺」下車すぐ
駐車場:有(10台)
ホームページ:海龍王寺