古代日本の中心地であった、奈良・飛鳥。
ここには、今も、その悠久の歴史を感じさせる名所旧跡が数多く残ります。
飛鳥東方の山に立つ岡寺もその1つ。西国三十三所の札所としても知られる古刹です。
飛鳥を見下ろす西国霊場
飛鳥の東、岡山の中腹に立つ岡寺。現在は、真言宗豊山派のお寺です。
この岡寺の創建は、飛鳥時代の7世紀末頃とされています。天武天皇の息子・草壁皇子が住んだ岡宮をお寺に改めたものと伝わります。
また、西国三十三所観音霊場の第七番札所としても知られ、今も多くの参拝者が訪れます。

なお、このお寺へは、山の麓から続く坂道をえんえんと登っていかなくてはなりません。特に、お寺直前の急坂はなかなかの難所です。
しかし、坂道を登った先の境内は眺望良好。西方に広がる飛鳥の地を見下ろすことができます。

岡寺境内の主な見どころ
春のサツキやシャクナゲなど、季節の花に彩られた美しい岡寺の境内。
その中に、仁王門や本堂など、江戸時代の建築物が残ります。

仁王門
お寺の正面入口に立つ、楼門形式の豪壮な門は仁王門。
急坂を登ってきた参拝客を、左右に立つ阿吽一対の仁王像が出迎えてくれます。
この仁王門は、江戸時代初期の建築。国重要文化財の指定も受けています。

本堂
仁王門をくぐり、さらに、石段を登った先の高台の上に、岡寺の主要なお堂が並びます。
その中でも、奥に見える、ひときわ目立つ大きなお堂が、岡寺の本堂。
こちらは江戸時代後期、1805年の建築です。

本堂の中には、岡寺の本尊、如意輪観音坐像が安置されています。
なかなか珍しい塑造(粘土造り)の観音さま。また、高さ5m近い巨像です。
この如意輪観音坐像は奈良時代の作で、大きさや像形などの点でも大変貴重なもの。国重要文化財にも指定されています。

龍蓋池
岡寺には、「龍蓋寺」という別の寺名があります。このお寺に残るある伝説が、その名前の由来となっています。
その昔、一匹の悪龍が周辺の農地を荒らし、人々を困らせておりました。そこに登場したのが、岡寺を創建した義淵僧正というお坊さん。
義淵僧正はその法力を持って龍を小さな池に閉じ込め、さらに二度と悪さをしないよう大石で蓋をしました。
この伝説に登場する池が、本堂前にある龍蓋池です。
また、この伝説から、岡寺は、災いを取り除く、厄除けのお寺としても知られ、「日本最古の厄除け霊場」とも言われています。

奥の院
本堂のお参りを終えたら、奥の院にも足をのばしてみましょう。本堂からさほど離れていませんので、気軽にお参りできます。
ここは、木々に囲まれた静かな空間。緩やかな石段が続く参道に沿って、十三重石塔、稲荷社、弥勒仏の石窟、本山開基・義淵僧正の廟所などが並びます。

岡寺の基本情報
住所:奈良県高市郡明日香村岡806
拝観時間:8:30~17:00(12月~2月は8:30~16:30)
拝観料:大人・大学生400円 高校生300円 中学生200円(小学生以下は無料)
アクセス:近鉄橿原神宮前駅から奈良交通バス「岡寺前」下車、徒歩約10分
ホームページ:岡寺