のどかな風景が広がる奈良県の飛鳥。
ここは、その昔、代々の天皇の都が置かれた古代日本の中心地。そして、かの聖徳太子が活躍した場所でもあります。
今も、飛鳥の各地に、太子とのゆかりの深い名所が残ります。
その1つが、今回ご紹介する橘寺(たちばなでら)です。
ここは聖徳太子生誕の地
飛鳥時代、推古天皇の摂政を務めた聖徳太子。
その活躍ぶりから、日本各地に聖徳太子とのゆかりのある地が残ります。
その中でも、太子とのゆかりが特に深いのが、この橘寺です。

まず、橘寺がある辺りは、古くから、聖徳太子が生まれた「太子生誕の地」として伝わります。
また、橘寺は、聖徳太子が、その生前に自ら建立したとされるお寺の1つ。
斑鳩の法隆寺や大阪の四天王寺などとともに、「聖徳太子建立七大寺」の1つにも数えられています。
この橘寺の実際の創建年は不明ですが、遅くとも7世紀前半には建立されたと推定されています。

昔の橘寺では、中門、塔、金堂、講堂が直線的に並んでいたそう。四天王寺や、法隆寺の前身・若草伽藍など、飛鳥時代創建のお寺で見られるレイアウトです。
高さ40mの五重塔もあったようです。その塔の跡が境内に残されています。

橘寺の境内見どころ
聖徳太子を祀るお寺として、皇族などの庇護を受けて繁栄した橘寺。
しかし、中世以降は戦乱に巻き込まれ、伽藍を失ってしまいます。
しばらく衰退した時期が続き、江戸時代も終わりを告げる、幕末の1864年にようやく再興されました。
現在は天台宗のお寺として知られます。

本堂(太子堂)
境内西側、昔の講堂跡に立つ大きな建物が橘寺の本堂。太子堂とも呼ばれます。
幕末の元治元年(1864年)の建築です。
堂内に祀られるのは、橘寺のご本尊、聖徳太子像。室町時代の像で、国の重要文化財に指定されています。

観音堂
境内北側に立つ観音堂。橘寺では本堂と並び重要なお堂で、堂内には如意輪観音像が安置されています。
平安時代の古い像で、こちらも国の重要文化財に指定されています。

謎の二面石
飛鳥の各地に、誰が何のために作ったのかなど未だ不明の「謎の石」がいくつも残されています。
(詳細は、次の「飛鳥の石造物」のページをご覧ください)

この橘寺にも謎の石あり。それは、本堂の左横に立つ二面石。
1mほどの高さの石、その左右二面にそれぞれ顔が彫られています。
異なる表情の二面は、人の心の中にある善と悪を示していると言われています。

橘寺の基本情報
住所:奈良県高市郡明日香村橘
拝観時間:9:00~17:00
拝観料:大人・大学生400円 高校生・中学生300円 小学生200円
アクセス:
(近鉄)飛鳥駅・岡寺駅から徒歩30分
(バス利用)橿原神宮前駅・飛鳥駅からバス乗車、「川原」下車、徒歩3分