京都府南部に位置する宇治は、歴史あるまち。
市街を貫く大河・宇治川の両岸には、由緒ある神社仏閣が数多く残ります。
その1つが、宇治川の東岸に鎮座する宇治上神社。
西岸の平等院とともに世界遺産「古都京都の文化財」にも登録されている、宇治の名所です。
祭神は菟道稚郎子命と父・応神天皇、兄・仁徳天皇
宇治上神社の創建は不明ですが、平安時代には存在していたと考えられています。
なお、すぐ近くの宇治神社とは、明治時代の神仏分離までは一体の存在でした。

この宇治上神社で祀られている神さまは、全部で三柱です。
その一柱は、菟道稚郎子命(うじのわきいらつこのみこと)。宇治という地名の由来ともされる、古代の皇子です。
他の二柱は、菟道稚郎子命の父・第15代応神天皇と、菟道稚郎子命の兄・第16代仁徳天皇。
つまり、応神天皇とその息子二人、一族揃って祀られていることになりますね。

宇治上神社の境内見どころ
宇治上神社が世界遺産にも登録されている理由は、境内に残る古い社殿にあります。
中でも、国宝指定の本殿と拝殿に注目です。
本殿
宇治上神社の境内奥、一段高くなった位置に、山を背にして立つ本殿。
この本殿は、内殿と覆屋の二重構造。他の神社ではあまり見られない、なかなか特徴的な造りです。
外から見える、横に長い流造の建物が覆屋、つまりカバーです。
この覆屋の中に、三柱の祭神をそれぞれ祀る、3つの小さな内殿が横に並んでいます。
向かって右が菟道稚郎子命を祀る内殿。中央は応神天皇で、左は仁徳天皇です。

この本殿は平安時代後期の建築とされ、国宝に指定されています。
一般に、神社では、伊勢神宮や春日大社のように、遷宮の際に社殿が建て替えられたりしますので、お寺と比べると、昔の古い建物が後代まで残っている例は少ないです。
その中で、平安時代の建物が残されているのは大変珍しいです。この宇治上神社の本殿は、神社の建築物としては最古と言われています。

拝殿
本殿の前にあるのが拝殿。
本殿同様に横に長い大きな建物ですが、こちらは寝殿造風です。
鎌倉時代後期の建築とされるこの拝殿も、本殿と同様に国宝指定を受けています。

拝殿の前には、左右2つの円錐形の砂の山が置かれています。
これは清め砂と呼ばれ、境内を清めるために使われます。
なお、この砂の山を見て、上賀茂神社の立砂を思い浮かべる方がいらっしゃるかもしれません。
ただ、上賀茂神社の立砂は、神さまが降臨する「神山」を模したもの。
一方、宇治上神社の清め砂には、神が宿る依代(よりしろ)のような意味合いはありません。

摂社・春日神社
春日神社は、宇治上神社の境内摂社の1つ。本殿向かって右側にあります。
「春日神社」という名や、祭神の武甕槌命(タケミカヅチ)から、奈良・春日大社から勧請した社と考えられます。
ただし、建物自体は、一般的な平入の一間社流造。春日大社系神社の特徴である、妻入の春日造ではありません。
春日神社の社殿は鎌倉時代後期の建築とされ、国重要文化財に指定されています。

名水・桐原水
宇治上神社の境内では、桐原水(きりはらすい)と呼ばれる水が湧き出ています。古来より、「宇治七名水」の1つに数えられた名水です。
ただし、他の七名水は今は失われ、現存するのはこの桐原水のみです。
現在、桐原水は、手を清めるための手水として使用されています。なお、取水して持ち帰ることもできますが、飲用する場合は煮沸が必要です。

宇治上神社の基本情報
住所:京都府宇治市宇治山田59
アクセス:(京阪)宇治駅から徒歩10分 (JR)宇治駅から徒歩20分
備考:境内自由
ホームページ:宇治上神社