京都の伏見といえば、伏見稲荷大社が有名ですが、この伏見稲荷の周辺には、他にも名所旧跡が残ります。
その1つが、今回ご紹介する日蓮宗のお寺、宝塔寺。
室町時代の伽藍も残る、伏見の隠れた名所です。
真言宗からの改宗寺院
鎌倉時代末期の創建とされる宝塔寺。
しかし、前身寺も含めた歴史はさらに古く、平安時代前半までさかのぼります。
宝塔寺の前身は、平安時代の関白・藤原基経の発願で建てられた極楽寺というお寺です。
この極楽寺は、元は、真言宗系の寺院でありました。
しかし、鎌倉時代末期に、当時の住職が日蓮宗の高名な僧・日像上人に帰依して改宗。
同時に、お寺も日蓮宗の寺院に改められました。それが宝塔寺です。

宝塔寺境内の伽藍紹介
室町時代の応仁の乱では、洛外の稲荷山周辺でも激しい戦いが繰り広げられました。
稲荷山の近くにあるこの宝塔寺も、兵乱により焼失。
失われた伽藍は、後の桃山時代~江戸時代にかけて、少しずつ再建されました。
ただし、多宝塔など伽藍の一部は応仁の乱での焼失を免れ、今も境内に残されています。

総門
お寺の正面に立つ四脚門。
室町時代中期の建立で、現在の宝塔寺に残る最古の建物の1つです。
国の重要文化財にも指定されています。

仁王門
総門をくぐると、その先に、緩やかな石段の参道が奥へと続きます。
その参道の先に、また別の門が立っています。今度は、楼門形式の大きな朱色の門。
これは仁王門。江戸時代中期、1711年に建てられました。
左右には、門と同じく朱色に塗られた一対の仁王像。
お寺を守護する仁王さま、仏敵をにらみつける、いかついお顔が特徴です。

本堂
仁王門の先は、宝塔寺の境内中心。
門をくぐった正面に見える大きな建物が、宝塔寺の本堂です。
正面(桁行)7間・奥行(梁間)5間、入母屋造りの建物。どっしりとした重量感のあるお堂です。
この本堂は、江戸時代初期の1608年の再建。国重要文化財に指定されています。
堂内には、本尊の日蓮宗十界曼荼羅、釈迦如来像、さらに、宗祖・日蓮と開山・日像の像が安置されています。

多宝塔
本堂の右手に見えるのは、多宝塔。
四角形の下層と円形の上層とがバランスよく重なった、美しい二層の仏塔です。
この多宝塔は室町時代の建立。応仁の乱以前の永享10年(1438年)には存在していたとされます。
総門とともに宝塔寺最古の建物で、国の重要文化財の指定も受けています。

裏山の七面大明神
もう1つ、宝塔寺で訪れておきたいスポットをご紹介しましょう。
それは、本堂の裏山に立つ七面宮。
七面宮への参道入口は、本堂北側、「太鼓楼」と呼ばれる建物の下にあります。

この太鼓楼から七面宮まで、傾斜は緩やかながら、長い参道がまっすぐ上へと続きます。
途中には宝塔寺開山・日像上人の御廟もあります。休憩もとりながら、ご自分のペースで登りましょう。
参道終点にある七面宮、祀られているのは七面大明神。
七面天女、あるいは、七面吉祥とも呼ばれる、日蓮宗で信仰される神さまです。
なお、七面宮の周辺は、大変見晴らしのよい場所です。
長い参道を登って疲れた体を休めながら、周囲の眺望をしばし楽しみましょう。

宝塔寺の基本情報
住所:京都市伏見区深草宝塔寺山町32
アクセス:(京阪)深草駅から徒歩7分 (JR)稲荷駅から徒歩10分
備考:境内参拝自由