奈良公園の奥、春日山の麓に鎮座する春日大社。
鮮やかな朱色の社殿が立つ境内周辺では、神の使いである奈良の鹿がくつろいでいます。
藤原氏とのゆかりの深い神社であり、長い歴史を誇る南都の名社です。
また、春日大社は、古くより奈良を代表する神社であり、近隣の東大寺や興福寺などとともに、世界遺産「古都奈良の文化財」にも登録されています。
藤原氏の氏神
春日大社は、奈良時代の768年、藤原氏によって創建された神社で、藤原氏の氏神を祀ります。
祭神は、鹿島神宮から勧請した武甕槌命(タケミカヅチ)など四柱。
同じく藤原氏の氏寺であった興福寺とは、明治時代の神仏分離までは一体の存在でした。

藤原氏とのゆかりの深さは、今でも随所に感じられます。
例えば、春日大社の社紋は、藤原氏の家紋と同じ「下がり藤」。
また、境内のあちこちで、藤原氏の象徴である藤が見られます。
特に、南門くぐってすぐ左、樹齢700年ともいわれる「砂ずりの藤」が有名です。毎年5月になると藤紫の美しい房を長くのばし、参拝客の目を楽しませてくれます。

参拝は表参道から
春日大社の境内は大変広く、春日山の西麓一帯に広がっています。
境内の西の端に立つ一之鳥居。ここから境内奥にある本社(大宮)へ向かって表参道がのびています。
一之鳥居から本社の南門(楼門)まで約1.3kmです。
奈良公園の中を東西に横切る表参道。道中に出没する鹿と触れあいながら、のんびりと散策を楽しむことができます。

表参道の南側には、飛火野(とびひの)と呼ばれる、広々とした公園があります。
ここは、一面芝生の芝生広場。草の上でくつろぐ鹿たちも見かけます。
また、飛火野の東には、「鹿の角切り」で知られる鹿の保護施設、鹿苑があります。

さらに参道を進むと、また朱色の鳥居が立っています。
これは二ノ鳥居で、そばには世界遺産碑。この鳥居をくぐると本社までもうすぐです。

朱色の社殿が立ち並ぶ本社
表参道の奥、回廊で取り囲まれた本社。鮮やかな朱色の社殿が立ち並ぶ、厳かな空間です。
主な社殿は江戸時代の建築で、文化財の指定を受けているものも多いです。
例えば、本殿は国宝、南門、弊殿・舞殿、中門などは国重要文化財の指定を受けています。

南門(楼門)
南側の回廊中央に立つ、朱色の大きな楼門が南門。
本社への入口であるとともに、春日大社の顔的な存在です。

春日大社は、奉納された灯籠の数が大変多いことでも有名です。
楼門の周辺にも石の灯籠がずらりと並びます。
紀州徳川家初代藩主・徳川頼宣寄進のものなど、古い灯籠も多く残ります。

弊殿・舞殿
南門をくぐった先の正面には、幅5間の横長の建物があります。
一般の神社における拝殿のようにも見えますが、これは弊殿・舞殿。1つの建物ですが、東側2間が弊殿、西側3間が舞殿と呼ばれています。
なお、一般の参拝(無料)で入ることができるのはここまでで、この弊殿・舞殿前から、奥の本殿へ向けて拝礼します。

東回廊
特別参拝(要初穂料)の場合は、弊殿・舞殿の先へ進むことができます。
まずは、弊殿・舞殿の横から奥へ入り、右側の東回廊へ。厳かさな朱色の廊下に吊り下がる、釣灯籠が印象的です。

東回廊からいったん外へ出てさらに奥へ進むと、赤い鳥居と拝所があります。
ここは、御蓋山浮雲峰遙拝所。
御蓋山は神さまが降り立ったとされる「神蹟」で、春日大社の中でも特に神聖な地とされています。

中門と本殿
弊殿・舞殿の背後、一段高いところに立つ朱色の門は中門。
この中門の先には、四柱の神さまをそれぞれ祀る4つのご本殿があります。
ただし、普段は、中門の先へ入ることはできません。中門前で本殿に向けて拝礼します。

中門の左右にのびる御廊の前、ぶら下げられているのは、またしても数多くの釣灯籠。
ここには、徳川綱吉、藤堂高虎、宇喜多秀家、直江兼続など、近世の武門から寄進された釣灯籠が並びます。
多くの武士から篤い崇敬を受けてきたことがわかります。

摂社めぐり
春日大社は、境内摂社が多いことでも知られます。
本社のある回廊の中はもちろん、回廊の外にもさまざまな摂社があります。
特に、境内南の十五摂社は「若宮十五社」と呼ばれ、多くの方がお参りされます。
その中でも人気は、夫婦大國社。
ここは、大国主命(オオクニヌシ)とその妻神・須勢理姫命(スセリヒメ)の夫婦神を祀る神社で、御利益は夫婦円満・縁結びです。

春日大社の基本情報
住所:奈良市春日野町160
開門時間:
(3月~10月)6:30~17:30
(11月~2月)7:00~17:00
備考:境内自由(御本殿特別参拝は初穂料700円)
アクセス:
(駅から徒歩)近鉄奈良駅から徒歩25分
(バス利用)近鉄奈良駅・JR奈良駅から奈良交通バス、 「春日大社本殿」下車すぐ
駐車場:有
ホームページ:春日大社