京都と大津との間にそびえる比叡山。
平安の時代から、京の北東鬼門を守ってきた「聖なる山」とされてきました。
この山にあるのが延暦寺。最澄(さいちょう)を宗祖とする天台宗の総本山です。
天台宗の総本山
延暦寺は、伝教大師・最澄が比叡山に開いたお寺で、天台宗の総本山です。
天台宗は、法華経を中心に、密教、坐禅、戒律を合わせた、「四宗兼学」が特徴。
当時の先端学問とも言える4つの教え(法華経、密教、坐禅、戒律)を一度に学べたことから、延暦寺には全国から優秀な人材が集まりました。
浄土系の法然(浄土宗)、親鸞(浄土真宗)や、禅宗(臨済宗)の栄西など、後に、新しい宗派を開いた名僧たちも、若い頃には延暦寺で修行を行っています。

一方で、延暦寺は、平安時代から、鎌倉、室町時代にかけて、荒くれ者の僧兵たちを数多く抱えたお寺でもありました。
その武力はそこら辺の武士たちをしのぎ、「一大武力集団」と化した延暦寺。
しかし、戦国時代に入るとこの武力が災いします。京を抑えた織田信長と対立し、全山焼き討ちされてしまいました。
現在の延暦寺にある建物の多くは、その後の桃山時代~江戸時代に、豊臣家や徳川家の援助を受けて復興した頃のものです。

境内の主要3エリア
さて、現代の延暦寺、比叡山にあるお寺、というよりも、比叡山という山全体が延暦寺そのものといった方が正しいですね。
山内の広い境内の各所に、長い歴史を感じさせる建物や遺跡が残ります。
その中でも主要なエリアは3つ。東塔(とうどう)、西塔(さいとう)、横川(よかわ)です。

延暦寺の中心、東塔エリア
東塔は、延暦寺境内で一番重要なエリアです。
ここは、伝教大師最澄が最初にお堂を建てた場所で、いわば延暦寺の発祥の地。
現在でも、重要なお堂が集まる、延暦寺全体の中心的な場所です。
根本中堂
延暦寺の総本堂。横幅が40m近くもある巨大なお堂です。
織田信長の焼き討ちで多くの建物を焼失した延暦寺、中心的なお堂である根本中堂も失われました。現在の建物は、江戸時代初期の1642年の再建です。国宝指定。
根本中堂に安置されているのは、伝教大師手彫りとも伝わる秘仏・薬師如来像。
また、この秘仏を納める厨子の前には、最澄による建立以来消えずに輝き続けているといわれる「不滅の法灯」があります。
なお、根本中堂は2016年から10年間の予定で改修工事中ですが、工事期間中も参拝可能です。

大講堂
根本中堂とともに東塔を代表するお堂。現在でも重要な法会がここで行われています。
現在の大講堂は、1956年に比叡山東麓の日吉東照宮から移築されたものです。建物自体は江戸時代1634年の建築物で、国の重要文化財指定。
堂内中央には、大講堂本尊の大日如来像が安置されています。

文殊楼
根本中堂の正面に立つ、朱色の大きな二重門。延暦寺の山門にあたります。
二階に文殊菩薩の像が安置されていることから、この名前がつきました。江戸時代1668年の再建で、国の重要文化財指定。

木々に囲まれた閑静な西塔エリア
西塔は、第二代天台座主の円澄によって開かれました。東塔から北に1kmほど離れたところにある、木々に囲まれた静かなエリアです。
西塔の中心的なお堂は、転法輪堂。秘仏の釈迦如来を安置しているため、一般には、釈迦堂の名でよく知られています。
この釈迦堂は、元は、天台寺門宗の三井寺の金堂であった建物です。
豊臣秀吉による闕所(けっしょ)の命で三井寺が一時的に解体されたときに、焼き討ち後で荒廃していた延暦寺に移築されました。

離れた場所にある横川エリア
横川は、第3世天台座主の円仁によって開かれました。東塔・西塔からかなり北に離れた場所にあります。
横川エリアの中心は、横川中堂。昭和46年の再建で、延暦寺の中では比較的新しい建物です。遣唐使船をイメージして作られたという、美しい朱色のお堂です。

主要3エリアの回り方
広い延暦寺の境内、主要3エリアに絞っても、1日で全部回るのは結構大変です。
参拝の優先順位は、(1)東塔(2)西塔(3)横川の順。
3つ全てを回る予定の場合でも、万が一、回れないときのことも考えて、まずはメインの東塔へ参拝しましょう。
エリア間の移動は車であれば苦労しませんが、そうでない場合はちょっと時間がかかります。山内で運行されているシャトルバスをうまく利用しましょう。
また、東塔と西塔間の距離は1km程度ですので、徒歩で移動することも可能です。道中には、伝教大師最澄の廟所、浄土院があります。

比叡山延暦寺の基本情報
住所:滋賀県大津市坂本本町4220
巡拝時間:
(東塔)9:00~16:00
(西塔・横川)9:00~16:00(3月~11月) 9:30~16:00(12月~2月)
巡拝料:
(東塔・西塔・横川共通券):大人1000円 中高生600円 小学生300円
(国宝殿(宝物館)拝観料):大人500円 中高生300円 小学生100円
東塔エリアへのアクセス:
(東側・大津坂本から)坂本ケーブル利用、ケーブル延暦寺駅から徒歩8分
(西側・京都から)叡山ケーブル・ロープウェイ利用、比叡山頂から山内シャトルバス乗車
駐車場:有
ホームページ:比叡山延暦寺