今回は、「神社について(祭神編その1)」に続く、神社の祭神編の第2回目。
前回は、日本神話の神々をご紹介しましたが、これらの神さまはほんの一部。
日本の神社では、この他にも、神話ではそれほど目立っていない、あるいは、神話とは全く関係しない神さまも祀られています。
今回は、そのような、神話との関係が薄い神さまについてご紹介していきます。
神話で目立たない神・神話と関係ない神
例えば、稲荷神社に祀られる稲荷大神の一柱、ウカノミタマは神話に登場する神ではあります。
ただ、神話の上では、アマテラスやスサノオのような目立つ神ではありません。
しかしながら、長い年月の間に人々に深く信仰され、今では日本全国に稲荷神社が存在します。
また、神話と全く関係しない神社も存在します。例えば、実在の人物である菅原道真を祀る天満宮。徳川家康など戦国武将を祀る神社もそうですね。
稲荷神社
稲荷神を祀る神社。通称「おいなりさん」。
稲荷神は、元は、穀物や農業を司る五穀豊穣の神さま。
その後、工業・商業など産業全般に信仰が広がり、今では「商売繁盛」の神さまとしてよく知られています。
日本各地で見られる稲荷神社、その総本社は、京都の伏見稲荷大社です。


また、神社によっては、神のお使いの動物がいる場合がありますが、稲荷神社における神使は狐。
商店街の一角にひっそりとたたずむ小さな稲荷神社でも、必ずといっていいほど狐の像が置かれています。
総本社の伏見稲荷大社は狐だらけ。境内の至るところに狐の像が置かれています。
伏見稲荷参拝の折りには、その広い境内の中、いろいろな姿の狐さんを探してみましょう。

天満宮(天満神社)
菅原道真を祀る神社が天満宮(天満神社)。通称「天神さん」。
菅原道真は平安時代に実在した人物。
右大臣という高位まで登ったお人ですが、京での政争に敗れて九州の太宰府に左遷され、失意の内に亡くなりました。
この道真公の霊を鎮めるために創建されたのが、天満宮の始まりです。
天満宮の総本社は、京都の北野天満宮と福岡の太宰府天満宮。

また、京から太宰府までの間、道真公ゆかりの地にもさまざまな天満宮が創建されました。
大阪天満宮や防府天満宮がその代表例です。


優れた政治家・学者として知られた菅原道真。
その道真公を祀る天満宮、御利益はどこも共通して「学業成就」。
学問の神さまとも呼ばれ、受験の季節が近づくと、どの天満宮にも多くの受験生が合格祈願に訪れます。
また、天満宮の境内では、臥せた姿勢の牛(臥牛)をよく見かけます。
牛は、菅原道真とのゆかりが深い動物。天満宮では牛が神使とされています。
「なで牛」とも呼ばれる臥牛像。牛の頭をなでると賢くなり、また、病気の箇所をなでると快癒する、などの言い伝えもあります。

八幡宮(八幡神社)
八幡神を祀る神社、八幡宮(八幡神社)。
八幡神の由来には不明な点も多いのですが、一般には、第15代応神天皇の神霊とされます。
日本全国にある八幡宮の総本社は、大分の宇佐神宮。
また、京の西南・裏鬼門守護を担った石清水八幡宮と、源頼朝とのゆかりの深い鎌倉の鶴岡八幡宮も有名です。
古来より八幡神は武神とされ、鎌倉時代以降の武士の世では、「武」を尊ぶ人々に崇敬されました。
現代では「勝利・成功」のご利益でも知られる八幡宮、スポーツなど勝負事をされている方に人気です。

えびす(恵比須・戎)神社
七福神の一柱としても知られる商売繁盛の神、えびすを祀る神社。
えびす神社では、1月10日とその前後に行われる神事「十日えびす(戎)」が有名。商売繁盛の福笹などを求め、大勢の人がえびす神社を訪れます。
ところで、「えびす」と呼ばれる神さまはいくつか存在します。
その代表格は、ヒルコ(蛭子)とコトシロヌシ(事代主神)の二柱。いずれも日本神話で少し登場する神さまです。
ヒルコは、イザナギとイザナミとの間に最初に生まれた神。
一方、コトシロヌシは、オオクニヌシの子神です。
えびす宮総本社・「西宮のえべっさん」西宮神社はヒルコ系の神社。一方、「大阪のえべっさん」と呼ばれる、今宮戎神社はコトシロヌシ系の神社です。


実在人物を祀る神社
先にご紹介した天満宮(天神さん)の菅原道真もそうですが、歴史上の実在人物を神として祀っている神社も多いです。
例えば、戦国武将を祀る神社。織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の「戦国三英傑」を神として祀る神社はよく知られています。
最も有名なのは、江戸幕府初代将軍、徳川家康を神として祀る東照宮。日光東照宮はもちろん、その他にも、日本各地にさまざまな東照宮があります。

太閤・豊臣秀吉を祀るのは、豊国(豊國)神社。
京都の豊国神社(とよくにじんじゃ)、大阪の豊國神社(ほうこくじんじゃ)など、秀吉ゆかりの地に残ります。


織田信長を祀る神社もあります。
その中では、京都・船岡山にある建勲神社(たけいさおじんじゃ)が有名です。


以上、日本の神社に祀られているさまざまな神さまについて、ざっとですが2回に分けてご紹介しました。
次回「神社について(社殿)」では、厳かな神社の境内に立つさまざまな社殿についてお話しします。
