尼崎城の西、古いお寺が集まる寺町。
賑やかな尼崎の街中にありますが、昔ながらの風情が残るエリアです。
この寺町に残る、一基の多宝塔。
外の通りからでも塀越しに見えるこの美しい塔は、寺町のシンボルです。
今回は、この多宝塔が立つお寺、長遠寺(ぢょうおんじ)をご紹介します。
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南北朝時代創建、日蓮宗のお寺
尼崎の寺町は、江戸時代初期、尼崎城の城下町整備の一環として形作られました。
寺町には、尼崎藩内の各地から数多くのお寺が集められました。
浄土宗、曹洞宗、日蓮宗など、それらのお寺の宗派はさまざま。
長遠寺も、別の地からここに移されたお寺の1つで、日蓮宗の寺院。
その創建時期は、南北朝時代(室町時代初期)の1350年とされています。
寺町へは、尼崎城が築城された1617年(元和3年)に移転されました。
長遠寺の見どころ
さて、太平洋戦争末期には空襲も受けた尼崎ですが、長遠寺はその被害を免れました。
現在の境内には、寺町に移転した当初からの古い建物がよく残されています。
また、この寺町の中では、東にある本興寺に匹敵する伽藍規模です。
では、その長遠寺伽藍の中でも、見どころとなるお堂をいくつかご紹介しましょう。
本堂
まずは、境内中央に立つ本堂。
正面(桁行)五間、奥行(梁間)六間、入母屋造の大きな建物。
正面中央には一間の庇がつき、四方には縁が巡らされた、江戸時代初期の典型的な仏堂です。
1623年(元和9年)の建立。国の重要文化財にも指定されています。
本堂に祀られるのは、題目宝塔と左右の多宝如来・釈迦如来。
日蓮宗のお寺でよく見かける、一塔両尊形式のご本尊です。
なお、本堂そのものは、オーソドックスな造りのお堂でありますが、周囲で彩りを添えるソテツ(蘇鉄)が特徴的です。
ソテツは日蓮宗のお寺でよく見かける木ですね。
多宝塔
境内入って左側に立つ二層の仏塔が、多宝塔。
長遠寺のみならず、寺町全体のシンボルとしても親しまれています。
多宝塔は、下層が方形、上層が円形をした塔です。
また、三間四方の塔で、多宝塔としては典型的なサイズです。
この多宝塔は、1607年(慶長12年)の建立で、桃山時代の様式をよく残しています。
1617年の寺町移転時にここに移築。
本堂と同様、この多宝塔も国の重要文化財に指定されています。
なお、本来、多宝塔は、多宝如来が安置される塔ですが、現在の塔内には釈迦如来が安置されています。
鐘楼
長遠寺境内では、多宝塔のすぐ北に立つ鐘楼もよく目立っています。
袴腰付きの古風な建物。
梵鐘がつり下げられている楼上は、その周囲に高欄が巡らされています。
この鐘楼も、江戸時代初期、寺町移転時期から残る貴重な文化財。
1627年(寛永4年)の建築物です。
長遠寺の基本情報
住所:兵庫県尼崎市寺町10
電話番号:06-6411-0573
アクセス:(阪神)尼崎駅から徒歩7分
駐車場:無(阪神尼崎駅近くの市営駐車場などを利用)
備考:境内参拝自由
ホームページ:長遠寺(尼崎市ホームページ)