京都東山のふもと、南から北に向かって、疏水分線と呼ばれる水路があります。
その流れに沿って風情ある小道がのびています。その名前は哲学の道。
2kmほどの長さで、軽くお散歩するのにちょうどよい散策路です。道沿いには銀閣寺をはじめ、さまざまな神社仏閣が並びます。
今回は、哲学の道と、その周辺の見どころをご紹介します。

疏水分線と哲学の道
滋賀県の琵琶湖から京都へのびる琵琶湖疏水(びわこそすい)。
明治時代、琵琶湖の水を京都へ引き込むために作られた、大規模な水路です。
東から流れてきた疏水は、京都に入った後、東山の蹴上(けあげ)で2つに分岐します。
鴨川に向かう「本線」に対して、北へ向かう分岐水路は「疏水分線」と呼ばれています。

この疏水分線の横に作られた遊歩道が、哲学の道です。
近隣で暮らした京の文人や哲学者たちがこの道を散策したことから、いつしか、このような名前で呼ばれるようになりました。
この哲学の道は、どの季節に訪れても風情が感じられる場所。春の桜、夏の緑、秋の紅葉、冬の雪景色。四季折々の風景を楽しめます。
なお、哲学の道は、「日本の道百選」にも選ばれています。

お散歩しながら寺社めぐり
疏水分線沿いは、神社仏閣が集まるエリアでもあります。
特に、疏水の東側には、銀閣寺・永観堂・南禅寺など、名だたる京の名所が並びます。
穏やかな流れの疏水に沿って、のんびりお散歩しながらの寺社めぐりはいかがでしょう。
では、哲学の道周辺のおすすめ寺社を、北から順にご紹介していきます。

銀閣寺(東山慈照寺)
まずは、哲学の道の北の端にある銀閣寺。
室町八代将軍・足利義政の別荘を寺に改めたもので、東山文化を象徴する寺院です。
有名な銀閣(観音殿)は、創建時から残る建物で国宝指定。
また、銀閣の周囲に広がる慈照寺庭園は、国の特別史跡・特別名勝に指定されています。


法然院
法然院は、哲学の道沿い、銀閣寺の南にあります。
浄土宗の宗祖・法然上人の草庵跡を由来とし、現在も浄土宗系のお寺です。
林の中にひっそりとたたずむ、数寄屋造の山門。その先に、閑静で風情ある境内が広がります。
境内は拝観自由、ただし、本堂など建物の内部は公開されていません。

大豊神社
大豊神社(おおとよじんじゃ)は、平安時代前期、宇多天皇時代の創建と伝わる京の古社です。
この社の特徴は、境内に置かれた、狛犬ならぬ、さまざまな「狛動物」。
狛ネズミに、狛猿、狛鷹(タカ)など。境内隅々をめぐって動物たちを探してみましょう。

永観堂(禅林寺)
哲学の道北端の銀閣寺に対して、南端にあるのは永観堂。
なお、「永観堂」は通称で、正式名は禅林寺。浄土宗(西山禅林寺派)のお寺です。
顔を横に向けた珍しい仏さま、「みかえり阿弥陀」で知られます。
また、この永観堂は、京都を代表する紅葉の名所。
晩秋の境内は、燃えるような紅葉で真っ赤に埋め尽くされます。

南禅寺
永観堂のすぐ南には、南禅寺があります。
室町時代、幕府から「五山別格」の最高格式の寺格(京都五山参照)を与えられた名刹です。
境内には、京都三大門の1つに数えられる巨大な三門。
また、北隣の永観堂と同様、紅葉の名所としても知られます。


また、南禅寺には、禅寺の境内にはちょっと珍しい、レンガ造りの大きな建築物が残ります。
これは「水路閣」と呼ばれる疏水分線の水道橋で、今も橋の上を水が流れています。
南禅寺の南で分岐した疏水分線は、水路閣にて南禅寺境内を通過。
その先は、永観堂周辺から、哲学の道の横を北に向かって流れていきます。

哲学の道の基本情報
住所:京都市左京区 哲学の道
アクセス:
(北端)銀閣寺周辺:(バス)「銀閣寺道」下車徒歩すぐ
(南端)永観堂周辺:(地下鉄)蹴上駅から徒歩10分 (バス)「南禅寺・永観堂道」下車、徒歩5分
備考:散策自由