天王寺公園の北側、上町台地の西側に、夕陽丘と呼ばれる地があります。
古くから美しい夕日を眺められる場所として知られたこの夕陽丘、坂が多いことでも有名。今も、「天王寺七坂」と呼ばれる古坂が残ります。
今回は、その夕陽丘の一角、天王寺七坂の1つ、愛染坂(あいぜんざか)を登った先にある、愛染堂勝鬘院(しょうまんいん)をご紹介。
縁結びの御利益で知られる、天王寺の由緒あるお寺です。
縁結びの愛染さん
愛染堂の前身は、聖徳太子が創建した四天王寺の施薬院(庶民救済の福祉施設)と伝わります。
現在も四天王寺との関係は深く、四天王寺を本山とする和宗のお寺(支院)です。


お寺のご本尊は愛染明王。縁結び・良縁成就などの御利益で知られます。
なお、正式な寺名は、勝鬘院(しょうまんいん)ですが、愛染明王を祀ることから、一般には、愛染堂の名で知られます。
また、地元では、親しみを込めて「愛染さん」とも呼ばれています。

朱色一色の境内
真っ赤な愛染明王を祀る愛染堂。
ご本尊だけでなく、入口の門や本堂など境内の建物も朱塗りで統一、朱色一色の境内です。
その朱いの境内には、縁結びのお寺らしく、恋愛系のパワースポットもあり。恋に悩む女性に人気のお寺です。

本堂
入口の門をくぐった先、正面に立つどっしりとした朱色のお堂。
江戸時代初期に、徳川二代将軍、徳川秀忠によって再建された建物です。
六角形の献灯(提灯)が本堂の壁に沿ってずらりと並ぶさまは、愛染堂ならではの光景です。

堂内中央には、ご本尊・愛染明王が安置されています。真っ赤なお肌、怒りに満ちた顔の明王さまです。
なお、この愛染明王は秘仏。普段は厨子の中に納められており、直接お顔を拝むことはできません。
正月(1/1~1/7)と愛染まつり(6/30~7/2)の期間に限り、ご開帳されます。

多宝塔
本堂の背後に隠れるようにして立つ多宝塔。愛染堂境内で逆に珍しい、朱塗りされていない建物です。
桃山時代の1597年(慶長2年)、豊臣秀吉による再建。
度重なる空襲を受けた大阪市内では、数少ない江戸時代以前の建築物で、国の重要文化財にも指定されています。
塔内には、十二本の腕を備えた大日如来「大日大勝金剛尊」を安置。多宝塔と同じく、この像も、豊臣秀吉により作られたと伝わります。
なお、多宝塔の扉は普段閉じられており、中の拝観はできませんが、愛染まつり(6/30~7/2)の期間に限り開扉されます。

一般的に、桃山時代の建築物は華やかな装飾が大きな特徴ですが、この多宝塔にも彫刻の装飾があります。
多宝塔の下層屋根のすぐ下、組物の間に、十二支の彫刻が施されています。
ただ、下からではちょっと小さくて見えにくいかもしれませんね。
双眼鏡やオペラグラス、カメラのズームレンズなどをお持ちなら、塔の軒下をレンズで拡大して眺めてみましょう。

縁結びのパワースポット
縁結びで知られる愛染堂には、恋愛系のパワースポットもあり。
本堂の愛染明王にお参りしたら、境内をひとめぐりして探してみましょう。
まずは「愛染めの霊水」。これを飲めば、愛染明王の功徳で願いが叶うとされます。
縁結びや良縁成就はもちろん、出世開運、商売繁盛の御利益もあるとされる、万能の水です。

縁結びの霊木「愛染かつら」も、愛染堂で古くから知られるパワースポット。
高さ数m・樹齢数百年とも言われる桂(かつら)の巨木に、ノウセンカズラの長いツルが巻き付いています。
幹とツル、両者一体、仲の良い男女を思わせる霊木は、恋愛成就、夫婦円満の象徴です。

愛染堂勝鬘院の基本情報
住所:大阪市天王寺区夕陽丘町5-36
開門時間:9:00~16:30 年中無休(境内参拝自由)
アクセス:
(大阪メトロ・谷町線)四天王寺前夕陽ヶ丘から徒歩3分
(JR・大阪メトロ)天王寺駅から徒歩15分
駐車場:境内に駐車スペース有(7台分)
ホームページ:愛染堂勝鬘院