奈良県西部、葛城市の當麻(たいま)は、二上山の麓に広がるのどかな里。
この地に残る當麻寺は、奈良でも特に長い歴史を誇る古刹の1つ。宗派は高野山真言宗と浄土宗の並立という、珍しい寺院です。
境内には、本堂(曼荼羅堂)や東塔・西塔など、多くの古い建築物が残ります。
中将姫伝説が残る古刹
當麻寺は、飛鳥時代の612年創建とも伝わる古刹。
次の「中将姫伝説」でも知られます。要約すればこんなお話です。
主人公は、中将姫(ちゅうじょうき)と呼ばれる、貴族の姫さま
継母のいじめを受けて家を追い出され、當麻寺で剃髪し出家
その後はひたすら極楽往生を願う中将姫
信心の深さから仏さまの助けを得て、一夜で巨大な曼荼羅(まんだら)を織り上げる

曼荼羅とは、阿弥陀如来の極楽浄土の世界を描いた、色鮮やかな絵図のこと。
中将姫が織ったとされる曼荼羅(根本曼荼羅)は、今も當麻寺に残されています(国宝指定)。
ただし、根本曼荼羅の制作年代は、東大寺大仏の開眼時期と同じ、奈良時代の天平年間。長い時の経過で傷みが激しいため、普段は公開されておりません。

古い建築物が残る境内
創建以降、幸いにも、大きな兵乱や火災を免れてきた當麻寺。
その境内には、奈良時代以降の貴重な建築物が数多く残されています。
東大門(仁王門)
多くのお寺では、「南大門」と呼ばれるように正門は境内の南に立っていますが、當麻寺では、東に立つ東大門が正門です。
左右に一対の仁王像が立つ楼門で、仁王門とも呼ばれます。

鐘楼
東大門をくぐった先、左手に見えるのが鐘楼。
楼の上部にかけられている梵鐘(国宝)は、白鳳期(飛鳥時代)のもの。日本最古とも言われる貴重な鐘です。

伽藍三堂
境内の中央に立つ本堂、金堂、講堂の3つのお堂。「伽藍三堂」とも総称されます。
中央には、東を向いて立つ本堂。桁行7間、梁間6間の大建築。當麻寺で最大の建物です。
平安時代末期の1161年の建築で、国宝指定。奈良時代の建物を改造した建物で、古い部材が随所に使用されています。
當麻曼荼羅を安置するお堂でもあり、「曼荼羅堂」とも呼ばれています。現在は、根本曼荼羅の写しである、文亀本(国重要文化財)が安置されています。

本堂向かって左側に立つのが金堂。鎌倉時代の再建で、国重要文化財指定。
堂内に安置されているのは、像高2m以上の大きさを誇る弥勒仏(国宝)。
また、この弥勒仏を守るように四天王像(国重要文化財)が周囲に立ちます。四天王像は、おひげを生やしたダンディな顔つき。なかなかのイケメンです。

本堂向かって右には講堂。
法会などを行うお堂で、横に長い造りをしています。こちらも鎌倉時代の再建で、国重要文化財指定。
講堂内には数多くの仏像が安置されています。
中央には、講堂本尊、丈六の阿弥陀如来像。
そのほかに目立つのが地蔵菩薩立像。背丈は阿弥陀如来像と同じくらい。お地蔵さまにしてはかなり大きな像です。

東西の古塔
境内の東西に立つ、美しい古塔。
ともに三重塔ですが、それぞれ高さは25m前後。かなり大型の塔です。
東塔は奈良時代末期、西塔は平安時代初期の創建で、東塔・西塔ともに国宝指定。
なお、国宝に指定される古塔が2つも残るのは、日本全国でもここだけ。
奈良の薬師寺にも東塔と西塔がありますが、国宝指定は奈良時代創建の東塔だけで、薬師寺西塔は戦後の再建です。

當麻寺の子院(僧院)
當麻寺にはいくつもの子院(僧院)があり、一部は公開もされています。
ここでは、中之坊と奥院をご紹介します。
中之坊
東塔のそばに立つ高野山真言宗のお寺。當麻寺最古の子院です。
中将姫が出家剃髪した場所とされ、中将姫ゆかりのスポットが残ります。
また、中之坊の境内には、国指定名勝の日本庭園「香藕園」があります。
桃山時代に作られた庭園ですが、江戸時代に、高名な茶人・作庭家である片桐石州により、現在の姿に改修されたと伝わります。

奥院
二上山を背にして立つ奥院。こちらは浄土宗のお寺です。
奥院本堂、鐘楼門、方丈など、国重要文化財指定の古い建築物が残ります。
境内奥には、浄土庭園が広がります。
二上山を借景とし、阿弥陀如来像を中心に池や草木が配された、自然感あふれる庭園です。

當麻寺の基本情報
住所:奈良県葛城市當麻1263
電話番号:0745-48-2001(中之坊)
拝観情報:境内散策自由(伽藍三堂の内部、及び、子院の拝観は有料)
(伽藍三堂)拝観時間:9:00~17:00 拝観料:大人1000円 小学生500円
(中之坊)拝観時間:9:00~17:00 拝観料:大人500円 小学生250円
(當麻寺奥院):拝観時間:9:00~17:00 拝観料:大人300円 小学生150円(宝物館は別料金)
アクセス:(近鉄南大阪線)当麻寺駅から徒歩15分
駐車場:有(詳細は下記ホームページ参照)
ホームページ:當麻寺(中之坊と伽藍堂塔) 當麻寺奥院